朝ドラ「純情きらり」のネタバレ!あらすじを最終回まで全156話紹介!

こちらでは、朝ドラ「純情きらり」のあらすじを、放送終了後最速で、ネタバレ更新しています

全156話を1話ごとにネタバレしていますが、ざっくりストーリーを知りたい方向けに、各週ごとの要点を絞ったあらすじネタバレもご用意。

他にも、超個人的な感想や、トリビアな小ネタもちょこちょこ紹介。

あらすじや感想に、放送前のネタバレが多く含まれていますので、先を知りたくない方はご退室くださいw

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7月6日再放送の朝ドラ『純情きらり』のネタバレあらすじ

こちらは、7月6日再放送の朝ドラ「純情きらり」のあらすじをまとめたネタバレ一覧です。

各週・各話ごとのあらすじは、「▼各週・各話のあらすじネタバレ一覧▼」で確認できます。

 

朝ドラ「純情きらり」今週の再放送一覧
放送回再放送日
第5話「桜子の演奏会」7月13日(月)
第6話「達彦へのラブレター」7月13日(月)
第7話「西園寺公麿との出会い」7月14日(火)
第8話「杏子のお見合い」7月14日(火)
第9話「一週間の停学処分」7月15日(水)
第10話「就職先を探す勇太郎」7月15日(水)
第11話「源一郎、事故に合う」7月16日(木)
第12話「源一郎死す」7月16日(木)
第13話「演奏家になりたい!」7月17日(金)
第14話「杏子嫁にいく」7月17日(金)

純情きらり各週・各話のあらすじネタバレ一覧

こちらは、朝ドラ「純情きらり」各週・各話のあらすじをまとめたネタバレ一覧です。

リンクをクリックすると、各話ごとの詳細なあらすじを確認することができます。

各週のネタバレについては、要点を絞ってまとめており、ストーリーに直接影響しない部分はカットしておりますので、詳しい内容を知りたい場合は、各話ごとのあらすじネタバレをご確認ください。

朝ドラ「純情きらり」各週・各話のあらすじネタバレ一覧
放送週「サブタイトル」放送回放送日
第1週「父の見合い」第1話「桜子、味噌桶に落ちる」4月3日(月)
第2話「源一郎のお見合い話」4月4日(火)
第3話「桜子、決闘を申し込む」4月5日(水)
第4話「源一郎、お見合いする」4月6日(木)
第5話「桜子の演奏会」4月7日(金)
第6話「達彦へのラブレター」4月8日(土)
第2週「ピアノがやって来た」第7話「西園寺公麿との出会い」4月10日(月)
第8話「杏子のお見合い」4月11日(火)
第9話「一週間の停学処分」4月12日(水)
第10話「就職先を探す源一郎」4月13日(木)
第11話「源一郎、事故に合う」4月14日(金)
第12話「源一郎死す」4月15日(土)
第3週「恋のプレリュード」第13話「演奏家になりたい!」4月17日(月)
第14話「杏子嫁にいく」4月18日(火)
第15話「下宿人がやってくる」4月19日(水)
第16話「先生指導してくれる!」4月20日(木)
第17話「模擬試験に挑戦!」4月21日(金)
第18話「薫子との別れ」4月22日(土)
第4週「プロポーズは突然に」第19話「杏子に会いに行く」4月24日(月)
第20話「レコードを割ってしまった」4月25日(火)
第21話「直道と仲直り」4月26日(水)
第22話「直道と笛子が恋仲に!?」4月27日(木)
第23話「杏子を連れ戻す」4月28日(金)
第24話「亮一が有森家へ」4月29日(土)
第5週「運命の分かれ道」第25話「直道との婚約」5月1日(月)
第26話「亮一との決別」5月2日(火)
第27話「初恋の終わり」5月3日(水)
第28話「山長は継げません!」5月4日(木)
第29話「演奏会の提案」5月5日(金)
第30話「達彦の演奏会」5月6日(土)
第6週「サクラサク?」第31話「試験を受けに東京へ」5月8日(月)
第32話「最終試験に挑む」5月9日(火)
第33話「最終試験の結果」5月10日(水)
第34話「桜子、試験に落ちる」5月11日(木)
第35話「来年も試験を受ける宣言」5月12日(金)
第36話「レッスンのお願い」5月13日(土)
第7週「貧乏なんか怖くない」第37話「初めてのレッスン」5月15日(月)
第38話「貧乏人は音楽家になれん!」5月16日(火)
第39話「ダンスホールに入り浸り」5月17日(水)
第40話「マロニエ荘の住人になる」5月18日(木)
第41話「マリ明日で辞めます」5月19日(金)
第42話「やっぱり結婚しません!」5月20日(土)
第8週「初めての連弾」第43話「あと1年だけ許す!」5月22日(月)
第44話「薫子と再会」5月23日(火)
第45話「斉藤先生との再会」5月24日(水)
第46話「斉藤先生現れず!」5月25日(木)
第47話「レッスンから除名される!?」5月26日(金)
第48話「かねがマロニエ荘に!」5月27日(土)
第9週「今宵、君と踊ろう」第49話「ドイツ旅行お断り!」5月29日(月)
第50話「思いを貫け!」5月30日(火)
第51話「西園寺の一番弟子」5月31日(水)
第52話「八州治の壮行会」6月1日(木)
第53話「チチキトク」6月2日(金)
第54話「拓司死す」6月3日(土)
第10週「夏の日の別れ」第55話「新生!山長の当主」6月5日(月)
第56話「冬吾追い出される」6月6日(火)
第57話「マルセイユで密会」6月7日(水)
第58話「明後日東京に帰る」6月8日(木)
第59話「冬吾を連れ帰る」6月9日(金)
第60話「桜子東京に帰る」6月10日(土)
第11週「キューピッド志願」第61話「冬吾の過去」6月12日(月)
第62話「笛子東京に乗り込む」6月13日(火)
第63話「しま子の気持ち」6月14日(水)
第64話「突然のお産」6月15日(木)
第65話「笛子結婚する!?」6月16日(金)
第66話「二つのお守り」6月17日(土)
第12週「絆が試されるとき」第67話「音楽学校合格!」6月19日(月)
第68話「先生の視察」6月20日(火)
第69話「先生か夫か」6月21日(水)
第70話「杏子逮捕される」6月22日(木)
第71話「最後の授業」6月23日(金)
第72話「笛子と冬吾の結婚式」6月24日(土)
第13週「私には今しかない」第73話「キヨシと結婚!?」6月26日(月)
第74話「召集令状が届く」6月27日(火)
第75話「又従兄弟と結婚!?」6月28日(水)
第76話「達彦と結婚してほしい!」6月29日(木)
第77話「達彦を送り出す」6月30日(金)
第78話「山長の若女将!?」7月1日(土)
第14週「若女将の試練」第79話「若女将修行の初日」7月3日(月)
第80話「達彦からの手紙」7月4日(火)
第81話「味噌料理を仕込み」7月5日(水)
第82話「ギックリ腰で代役を!」7月6日(木)
第83話「18年ぶりのタミ」7月7日(金)
第84話「東京からの来訪」7月8日(土)
第15週「別れのコンチェルト」第85話「八州治がやってくる」7月10日(月)
第86話「東京にいくべき!?」7月11日(火)
第87話「徳治郎苦渋の選択」7月12日(水)
第88話「八丁味噌の危機」7月13日(木)
第89話「海軍への売り込み」7月14日(金)
第90話「達彦の一時帰宅」7月15日(土)
第16週「磯おばさんの秘密」第91話「再び東京へ」7月17日(月)
第92話「笛子産気づく」7月18日(火)
第93話「亨の誕生」7月19日(水)
第94話「磯の告白」7月20日(木)
第95話「和之の道」7月21日(金)
第96話「展覧会開催」7月22日(土)
第17週「希望は捨てません」第97話「秋山との再会」7月24日(月)
第98話「冬吾働きにでる」7月25日(火)
第99話「あきらめたらお終い」7月26日(水)
第100話「希望を捨てない」7月27日(木)
第101話「姉に告白」7月28日(金)
第102話「子供たちのために」7月29日(土)
第18週「いつかまたピアノは響く」第103話「出版社の絵本」7月31日(月)
第104話「編曲したおぼろ月夜」8月1日(火)
第105話「音楽で元気になる」8月2日(水)
第106話「ふるさと」8月3日(木)
第107話「士郎の謝罪」8月4日(金)
第108話「岡崎に戻る」8月5日(土)
第19週「ショパンよ母に届け」第109話「松浦夫婦の怪しい行動」8月7日(月)
第110話「八丁味噌を盗んだのは誰?」8月8日(火)
第111話「あの味噌は売ったらあかん!」8月9日(水)
第112話「大将からの手紙」8月10日(木)
第113話「女将の病」8月11日(金)
第114話「お母さんと呼ばせてください」8月12日(土)
第20週「来ぬ春を待ちわびて」第115話「女将の小さな夢」8月14日(月)
第116話「大雨による店の危機」8月15日(火)
第117話「かね死す」8月16日(水)
第118話「山長から身を引く」8月17日(木)
第119話「みんな焼いちまうか!」8月18日(金)
第120話「上京する桜子と磯」8月19日(土)
第21週「生きる歓(よろこ)び」第121話「冬吾を見捨てない!」8月21日(月)
第122話「冬吾目を覚ます」8月22日(火)
第123話「今が底の底」8月23日(水)
第124話「決断の時」8月24日(木)
第125話「みんなで岡崎へ」8月25日(金)
第126話「モデルになってくれないか?」8月26日(土)
第22週「さよならを越えて」第127話「紙芝居と音楽」8月28日(月)
第128話「代用教員の誘いを受ける」8月29日(火)
第129話「杏子の再婚」8月30日(水)
第130話「八州治の招集令状」8月31日(木)
第131話「亨の命守ってくれ!」9月1日(金)
第132話「Tに捧ぐ」9月2日(土)
第23週「思いがけない帰還」第133話「陽のあたる街角で」9月4日(月)
第134話「ジャズバンドの誘い」9月5日(火)
第135話「かねの一周忌」9月6日(水)
第136話「達彦が帰ってきた!」9月7日(木)
第137話「昔の俺じゃない」9月8日(金)
第138話「達彦の謝罪」9月9日(土)
第24週「あなたがここにいる限り」第139話「桜子職を失う」9月11日(月)
第140話「冬吾が逃げてきた!」9月12日(火)
第141話「桜子のジャズコンサート」9月13日(水)
第142話「あなたのそばにいる」9月14日(木)
第143話「Tは誰?」9月15日(金)
第144話「ついに結ばれる」9月16日(土)
第25週「夢に見た演奏会」第145話「桜子と達彦の結婚式」9月18日(月)
第146話「西園寺にお願いしてきた」9月19日(火)
第147話「亨と桜子」9月20日(水)
第148話「亨が行方不明」9月21日(木)
第149話「仙吉辞めさせていただきます」9月22日(金)
第150話「桜子のおめでた」9月23日(土)
第26週「いのち、輝いて」第151話「結核になった桜子」9月25日(月)
第152話「子供を産む決断」9月26日(火)
第153話「冬吾、九死一生を得る」9月27日(水)
第154話「輝一の誕生」9月28日(木)
第155話「達彦からの贈り物」9月29日(金)
第156話「桜子から輝一へ」9月30日(土)

朝ドラ「純情きらり」あらすじの概要

※朝ドラ「純情きらり」あらすじの概要には、ネタバレが含まれますので、ご注意ください。

ジャズピアニストを夢見る有森桜子は、幼いころに母・マサを亡くして、父親の源一郎に男手一つで育てられました。

ジャズピアニストになるために、東光音楽学校への進学を考えていましたが、周囲からは反対され、どうすべきな悩んでいた矢先に父・源一郎が事故にあい、他界してしまいます。

一家の主を亡くした桜子でしたが、幼馴染の松井達彦の励ましもあって、東光音楽学校を受験します。

しかし、不合格になって夢も希望もなくなってしまいます。

沈んでいた桜子を見かねて、東光音楽学校の教授・西園寺公麿は励まし、来年もう一度受験することを決意しました。

その後、幼馴染の松井達彦と結婚し、息子の輝一を出産します。

しかし、結核を煩っていた桜子は、輝一に感染しないよう会おうとしません。

そこで、家族が輝一の動画を収め、彼女に見せるのです。

朝ドラ「純情きらり」各週あらすじの概要

こちらでは、朝ドラ「純情きらり」各週あらすじの概要をまとめています。

さきほどもお伝えしたように、全容はなく各週あらすじのポイントとなる部分の概要になりますが、ネタバレを多く含んでいます。

第1週「父の見合い」

純情きらり第1週「父の見合い」のネタバレあらすじは、妻・マサを亡くして男で一人で育てていた勇太郎に、見合い話が舞い込むも桜子が再婚することに反対し、結局再婚をあきらめるストーリーとなっています

愛知県岡崎市に住んでいる有森家。家長の源一郎ははじめ、笛子、杏子、桜子、勇太郎の5人家族である。近くには、亡き母・マサの実父で桜子たちの祖母である沖田徳治郎が住んでいた。

沖田徳治郎は、八丁味噌の老舗『山長』の職人として味噌一筋に生きてきた男で、ある日、勇太郎と桜子を連れて、味噌の仕込みを見学することになった。

桜子と勇太郎はかくれんぼをしている。

桜子が樽の中にいるかもしれないと、樽に登っていくと、山長の跡取り息子の達彦がいたずらで、ハシゴを揺らすと、そのまま樽に落ちてしまった。

勇太郎は、姉が落ちたことを父に伝えようと家に戻ってきた。みんなで山町に向かおうとしたところ、偶然にも妹の磯が帰って来たのでした。

山長の女将・かねと磯は同級生ということもあり、頼まれもしないのに一緒にいくことになった。

山長に着くと、徳治郎がかねに謝罪していたが、桜子は頑として謝ろうとしない。駆けつけた源一郎が理由を聞くと、達彦に落とされたと話す。それを聞いたかねは怒り心頭ですが、そこに磯がやってきて、罵り合う。

後日、かねに呼び出された徳治郎と源一郎は、達彦にも落ち度があったということでお咎めなしに。それとは別に、源一郎に再婚話も持ちかけられる。

ある日、弟がいじめられているのに我慢ならない桜子は、いじめっ子のキヨシに果たし状を書く。指定された場所にやってきたキヨシと一線交えて勝利した桜子。

そこにやってきた源一郎たちが原因を聞くと、弟のズボンの継ぎあてをからかわれたことだと知る。その継ぎあては不器用な桜子がやったものだった。それを聞いた徳治郎が「子供には母親が必要なんだよ」とつぶやく。

家に帰ると、子供たちにお見合いの話を打ち明ける。桜子以外はみな好意的だが、桜子だけはかたくなに嫌がった。

それから数日後に、お見合いの場に臨んだ源一郎。終始和やかにお見合いが終わり、お見合い相手の安江が帰ろうすると履物にいたずらをされていた。

その犯人は桜子で、祖父の納屋に逃げ込む。父がやってくると二人で話し、マサへの愛情の深さに勝るものはないと悟る。

見合いを断ってから9年が経ち、桜子は女学校五年生の16歳になった。友達の薫子たちと話をしているとそこへ達彦が通り過ぎた。

桜子が達彦の知り合いとしった薫子は、彼女に達彦への恋文を渡してほしいとお願いする。しかたなく、山長に向かうと間が悪いことに、かねがやってきた。手紙を見られた取り上げようとするかねに抵抗して逃げ帰った桜子。

後日、学校で、西野先生から達彦に恋文を送ろうとしたことを問い詰められる。かねと取り合いをしたときに一部切れ端が残っていたのだ。しかし、友達を裏切ることができず、口を割ろうとしない桜子。

ちょうどその日は、待ちに待った西園寺の演奏会の日だった。演奏会の開演時刻が刻一刻と近づき、どうしても帰りたかった桜子は自分が手紙を書いたとウソをついてしまう。

第2週「ピアノがやって来た」

純情きらり第2週「ピアノがやって来た」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する源一郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

会場にたどり着いた桜子。嘘をついてまで聴きたかった西園寺公麿の演奏会はすでに終わっていて、会場には、グ ランドピアノがあるだけで誰もいない。

ひとりグランドピアノを弾いていると後ろから帰ろうとする西園寺公麿がやってきた。彼に気づくとそのまま弾くよう促される。弾くのをやめると「下手だね、君」といわれますが、当時まだ楽譜が出回 っていない「セントルイス・ブルー ス」の曲を耳で覚えて弾いた桜子 に興味を示す。

帰り際、西園寺公麿から名刺をもらい、「東京に出てくることがあったら、寄りなさい」といわれる。

翌日、桜子は恋文騒動の罰で、新入生歓迎会のピアノ伴奏の役を降ろされてしまうが、薫子が西野先生に真相を告白したことで、伴奏役に復帰できる。

それでも疑いが拭えないかねは、恋愛より東京の音楽学校で勉強したいという桜子に対し、安月給取りの娘が学費の高い音楽学校に行けるものかとこき下ろす。

「音楽に身分なんて関係ない!」桜子は一層東京の音楽学校への夢が強くなり、その思いをとうとう父にぶつけた。しかし、源一郎は来年定年であり、男子である勇太朗を大学進学させたい。「考えておくよ」という言葉に一縷の望みがあると感じた桜子だった。

あくる日、次女・杏子のお見合い。気になってしょうがない桜子は勇太朗を連れて様子をこっそり見に行く。相手は名古屋の大地主で、河原亮一という資産家の長男で銀行員だ。

優しさや人間味の感じられない河原に対し、違和感を感じた杏子。しかし、河原家はこの縁談に乗り気のようだ。自分が嫁に行くことで、早く姉や叔母を安心させたい思いもあるが、ためらいを隠し切れない杏子。

新入生歓迎会の日、ピアノ伴奏を担当する桜子は、なんとジャズ調の「花」弾き始めた。最初は呆気にとられた客席もだんだんノリがよくなり、少女たちは若さと情熱できらきらと輝いていた。

時代を先取りした桜子のジャズ演奏は、町ではちょっとした話題となったが、桜子は一週間の停学処分となり、反省文を書かされることに。

ある日、桜子は昔決闘したキヨシと散歩をしていたところ、昔馴染みに囃し立てられた。実は桜子に気があるキヨシは恥ずかしさから殴り合いになり、警察沙汰となってしまう。停学中の桜子は退学の危機に。父はわざと先生の前で娘の頬を叩き、猛省の姿を示す。退学になってしまえば、音楽学校への夢は絶たれてしまうからだ。父は娘の夢をかなえるため、退職金の前借りを申し出る。

夕方からの雨が強くなり、夜には土砂降りに。市役所の土木課に勤める父は、土砂崩れの現場に駆り出され、有森家の娘たちは不安になっていた。

土砂崩れの現場で、村人たちを安全な所へと誘導していく源一郎たち。その時、源一郎は足元に白く光る水晶を見つけた。かがみ込んで手にとったその時、岩石が崩れ落ちてきた。源一郎は昏睡状態に陥り、一昼夜が明けても意識は戻らない。

次の夜、奇跡的に源一郎の意識が戻った。ひとり病院に残り父に付き添う桜子は、遺言のようなことを話す父に不安を感じる。そして、事故の原因となった水晶を桜子にくれた。

源一郎の目に、リンゴの皮をむく桜子の後ろ姿が、妻マサの姿と重なった。桜子がリンゴを渡そうと振り向くと、父は穏やかに目を閉じていた。永遠の眠りについた父の顔は安らかだった。

悲しみに包まれる有森家。桜子は書斎で父からの手紙を見つける。

『東京の音楽学校のこと、いつか君が言い出すだろうと思っていました。しっかりやってください。君なら、だいじょうぶ』

桜子は、父の深い愛情と思いに胸がいっぱいになり、父からの手紙を抱きしめた。

そんな時、大荷物が有森家に届けられる。なんと、ピアノだ。源一郎が退職金を前借りして買ったのだ。

「お父さん!………お父さん!」

父の身代わりのようにやってきたピアノに父の大きな愛を感じ、皆がピアノに寄り添った。

第3週「恋のプレリュード」

純情きらり第3週「恋のプレリュード」のネタバレあらすじは、杏子が嫁にいき、4人になった有森家。少しでも学費を稼ぐために下宿人を募集することになる。下宿人と面接するも祖父にことごとく邪魔をされるが、偶然桜子と出会った直道が下宿人として有森家にやってくるストーリーとなっています

ピアノを遺してくれた父のためにも、音楽学校へ進学したい。桜子の思いは日々募っていた。一方で笛子は、家計の事情も考えずピアノばかり弾いている桜子に苛立っていて、桜子と笛子は口論となる。その様子を見て、次女・杏子もある決意をしていた。

杏子はお見合い相手の河原に、『結婚したら、弟や妹の進学資金を援助してくれる約束』が本当であるのか確かめ、杏子は結婚を決心する。

その年の七月、白無垢のとても美しい花嫁となって、杏子は河原家に嫁いでいった。

家族が少なくなり空き部屋ができたことから、家計を支えるためにも下宿人を置くことになった有森家。そんな折、桜子は街で、いかにも生真面目そうな強い近眼の男性とぶつかりそうになる。桜子はこの男が落とした荷物の中に、ショパンのレコードがあるのを目ざとく見つけた。

斉藤というこの男は、ちょうど下宿先を探していた。第二師範の物理教師であり、勇太郎の家庭教師も引き受けてくれるということで、磯や笛子に気に入られ有森家の下宿人に決まった。

哲学的な発言をするかと思えば、節約のために風呂の回数が少なく、頭をポリポリかきむしる斉藤。桜子は呆れ気味だが、一風変わったこの男を、磯は笛子の相手にどうかと考えていた。

音楽学校を目指す桜子であったが、独学での限界を感じ悩んでいた。桜子は西野先生に頼み込んで、ピアノのレッスンをお願いする。桜子の熱意に押され、前年の東京音楽学校の課題曲を三日後、どこまで弾きこなせるようになるか、結果次第で指導するということになった。

女学校の音楽室にこもり、夜が更けるのも忘れて、懸命にピアノを弾き続ける桜子に、斉藤が差し入れを持ってきた。父を早くに亡くし、貧乏で苦学しながら大学に進学した斉藤は、志があればなんとかなる!と励ます。

音楽室で朝まで練習した桜子は、そのまま西野の前で課題曲を弾くことになった。技術は到底及ばないが、曲を大切にする演奏に心を動かされた西野。また、笛子も桜子の熱意に今年一回限りを条件に受験を許す。

戦争という現実が少しずつ近づいてきた。親友・薫子の兄の出征することに。薫子の兄は東京で左翼の活動をしていて、そのことが父親の会社に発覚し、気まずくなった一家は、町を離れるという。危険を承知で薫子の兄の本を預かる桜子。斉藤は心配する。小説家になることが夢である薫子は、どこに行っても志を曲げないで!と言い残し、立ち去った。

親友を見送る桜子を、斉藤が見守っていた。「自分の中にどうしても曲げたくない、曲げられないものが一つあるというのは、素敵なことだ」と言う斉藤。自分の気持ちを深く理解してくれたことに、桜子の斉藤に対する気持ちが変化した。

桜子の胸で小さく繊細な感情が生まれていた。

第4週「プロポーズは突然に」

純情きらり第4週「プロポーズは突然に」のネタバレあらすじは、下宿人の直道が有森家にやってきてから想いを寄せるようになる桜子。一緒に杏子の家にいくと姉が暴力を振るわれていることを知り、実家に連れ戻すストーリーとなっています

昭和十二年八月初旬。

まだ十七歳の桜子は、学問一筋、不潔だけどクラシックに造詣の深い斉藤に尊敬と不思議なときめきを抱いていた。

ちょうどその頃、家族のために資産家に嫁いだ杏子から、お盆には帰れそうにないというハガキが届く。お見合いで垣間見た、杏子の夫・河原の「人となり」を考えると、とても心配なった桜子は、斎藤と名古屋に向かう。

妹との久しぶりの再会に、喜ぶより困ったように時間ばかりを気にしている杏子。顔色の悪い杏子を心配する桜子に、無理に微笑んだ。

姉妹再会の間、応接間で待っていた斉藤は、うっかり骨董の壺を壊してしまう。杏子の失態だと思った河原は、杏子の襟首をつかんで手を振り上げた。凍りついた桜子は、勇気を振り絞って河原に抗議するが、杏子は「私たちはうまくいっている」と言うのだった。

家に戻っても、桜子は杏子の結婚生活が危ぶまれて悶々としていた。

ある日、杏子からお金が届く。河原が桜子の学費にと出したものだ。杏子のことが心配で笛子に相談するが、河原を紳士だと信じ切っているため話は通じない。

悩みながら数日後の夜、桜子と斉藤が恋仲だという噂を聞きつけ、徳次郎がやってきた。桜子と斉藤では大人と子供ほどの年の差。磯は笛子の相手にちょうどいいと言い、笛子にもその気があるらしい。桜子は、家族を支えてきた姉が幸せになるならと、自分の気持ちを隠して、姉の恋を後押しすることにした。

斉藤は、急に自分を避け始めた桜子を不思議に思い、帽子でもプレゼントしようかと洋品店の前で足を止めた。ところが、磯に遭遇し、笛子へのプレゼントと勘違いされる。否定できないまま、プレゼントで盛り上がっている有森家。

誤解を解こうと庭にいる笛子に話があると誘う斉藤。結婚の話に違いない!と磯も笛子も色めきたった。しかし、斎藤から出た言葉は「桜子さんが好きなんです」。まっすぐで、やることにためらいがない桜子を尊敬し、好きだという。

川辺にたたずんでいた桜子は、達彦に会った。杏子が河原に殴られているところを目撃したという。桜子は河原家に向かった。杏子の顔に青い痣がくっきりとできているのを見て、有無を言わせず、杏子を連れ帰った。自分が音楽学校を諦めれさえすれば、姉は嫁ぎ先に帰らなくて済むとわかっていたが、桜子は思い悩んでいた。

河原が杏子を連れ戻しにやってきた。「妹の学費欲しさに結婚したくせに」と言う河原に、姉を辛い思いさせてまで音楽学校に行くつもりはないと言い、自分自身も決心する桜子。あんなに熱望した音楽学校への道を諦めてまで杏子を守ろうとする桜子の意志を組み、笛子は河原に「杏子を置いてお引き取りください」と凛とした態度で言った。

音楽の道も閉ざされ、初恋も終わってしまった桜子だったが、すぐに奨学金制度という新しい道筋を見つけた。しかし、今の実力ではこれまで以上に狭き門となることは必至だ。

笛子は、望んでくれた人と結婚して、幸せに暮らすことを桜子に勧めた。そして、斎藤に桜子さんが好きだと言われたと話す。戸惑いと嬉しさが、桜子の中で渦巻いた。

第5週「運命の分かれ道」

純情きらり第5週「運命の分かれ道」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後も就職する源一郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

斉藤のように懐の深い男性との出会いを大切にしたい。でも自分には音楽への夢もある。ピアノの前に座る桜子の心は混乱していた。

奨学生試験に受かる可能性は低いが、逃げ道として結婚を選ぶのは筋が違うと思う。桜子は、自分にできる精一杯の誠意として、胸のうちにあるがままを斉藤に伝えた。斉藤は「僕はこの岡崎で教師として勤めながら、四年間、あなたの帰りを待つ」と言う。夢のような幸福感を感じた。

ある夜、斉藤に電報が届く。文面を見ると、理由も告げず、その日の晩に東京へ行ってしまった。何の連絡もないまま数日が過ぎ、ある晩、やっと戻ってた斉藤は、結婚を白紙に戻してほしいと言う。桜子の頭は真っ白になった。

帝大時代の恩師から、山口県にある海軍燃料工廠の職を薦められ、勉学一筋に励むため、結婚など考えてられなくなったと話し、深々と頭を下げる斉藤。

そんな斉藤を最後まで理解し、送り出そうとする桜子。怒りのおさまらない勇太郎が、斉藤の残していったノートや書類を燃やそうとしていると、破られた電報の紙片が目に留まった。『ハサンスグコラレタシ』。母親の再婚相手が破産し、斉藤も多額の借金を背負う事態となり、有森家に迷惑をかけられないと結婚を破棄したのだ。

全速力で自転車をこぎ、駅へ向かう桜子。「先生―!」声を限りに叫ぶと、斎藤が立っていた。一緒に行かせてほしいという桜子に叱咤する斉藤。「音楽は、あなたの人生を照らす光。その光を失ったら、あなたは輝けなくなる。つらくても、後ろを向いちゃダメだ」自分のことを大切に思ってくれている斉藤を懸命な笑顔で見送った。

年が明けた昭和十三年正月。山長では盛大な新年会が行われていた。かねは、山長の跡継ぎである達彦に、新年会を仕切らせようとするが、達彦は職人たちを前に山長は継げないと宣言する。達彦も音楽が好きで、音楽学校の受験を考えていたのだ。

桜子は、西野先生が自分のために選んでくれた受験の課題曲に不安を抱いていた。難易度が低い曲で勝負には不利だ。しかし、桜子の実力ではこれが精一杯だという。西野先生は、心の底から楽しい思いが湧いてくる桜子の演奏は、誰にもない才能であり、この特徴を活かせば合格の可能性があると考えていた。

目標が見えた桜子が練習に励んでいると、かねが乗り込んできた。達彦が山長を継がず、音楽学校目指すと言い出したのは、桜子のせいだと言う。桜子はなじみの喫茶マルセイユに向かった。

店内では達彦が、流麗なベートーベンのピアノソナタ弾いていた。課題曲の一つで、難しい曲である。まるでレコードを聴いているかのような演奏。桜子は、完全な敗北感を感じ、悔しさで拳を握りしめていた。

達彦は、音楽学校の受験のことで、かねと激しい親子喧嘩となり、ついには勘当するとまで言われた。以来、マルセイユに身を寄せている。ピアノが上手い達彦は、マスターに頼まれて店で演奏していた。これが、生演奏つきの喫茶店として岡崎で評判を呼んでいた。そんな才能に恵まれたているのに、生まれた時から跡取りと将来が決められ、好きな音楽の道を進めない達彦。

桜子は、かつて徳次郎の前でオルガンを弾いたことを思い出し、マルセイユで演奏会を開くことを提案する。達彦のピアノを披露し、多くの人が素晴らしさで勘当すれば、かねも考え直すのではないか?そう思ったのだ。

演奏会当日、達彦はすきを突かれ、かねと味噌職人たちに連れ去られて納屋に閉じ込められてしまう。演奏時間が迫っても達彦が現れない。もう待てない!桜子は達彦の代わりに意を決して弾いた曲は「セントルイス・ブルース」。楽しく、ノリのいい曲に、帰りかけた客がまた椅子に座り直してくれた。

必死になって客を引き止めている桜子の姿を見ていたキヨシ。山長の味噌職人になっていたキヨシは、かねの命令に背く決心をし、達彦を開放する。

お客の足止めも限界に来た頃、達彦が息を切らして飛び込んできた。これまでの窮地などなかったようにピアノの演奏を始める達彦。その演奏は、素晴らしく、聞く人すべてを自分の音楽世界に引き込んでいた。

拍手喝采の達彦は、一礼した時、入り口に立つかねが見えた。母の目に涙が浮かんでいる。かねは、達彦の音楽学校受験を許すことにした。

第6週「サクラサク?」

純情きらり第6週「サクラサク?」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する源一郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

二か月後の三月。東京音楽学校を目指して桜子と達彦は共に上京した。ライバル心から連れない態度の桜子だが、人の多い東京駅で心もとない様子。達彦は桜子に嫌煙されながらも、危なっかしくて目が離せないでいた。

そして、桜子が、似顔絵描きの男に話しかけられ気を取られた隙に二人の荷物は置き引きされてしまう。達彦が少しその場を離れた間のことだ。無一文の二人を見かねて、似顔絵描きの八州治が、自分の住むマロニエ荘に案内してくれた。

マロニエ荘は、かなり古いがちょっと洒落た西洋風のアパートで、ランチルームにピアノもあった。空き部屋の一つを案内されると、三十ぐらいの杉冬吾という男が全裸の女性をモデルに絵を描いていた。刺激的な光景に驚く桜子と達彦。空き部屋は残り一つしかなく、二人は相部屋に。寝付けないまま受験の日を迎えた。

東京音楽学校の試験は一次から三次まであり、合格が決まるまで一週間近くもかかる難関だ。桜子も達彦も、無事一次試験を突破し、マロニエ荘の住人で三浪中のホルン奏者・小野寺ハツ美も無事に通過した。そこで、ランチルームで宴会が開かれた。アパートの住人、八重洲、ハツ美、画家志望の八重とダンサーのマリが顔をそろえた。

宴もたけなわの頃、「さっき警察がもってきたよ」と置き引きされた荷物が渡された。お金も減ってないが、なぜか味噌が多少減っていた。桜子は泊めてくれた上にお祝いまでと、マロニエ荘の住人に素直に感謝するが、達彦は腑に落ちない様子。

 

 

宴もたけなわ近く、八州治が不意に叫んだ。

「あ!さっき警察が持ってきてくれたんだ、おたくらの荷物」

荷物に飛びついた桜子が中身を改めると、楽譜も財布も無事である。

「いい人たちだねえ。見ず知らずの私たちの試験の結果、気にして、お祝いまでしてくれて」

桜子は素直に八州治たちに感謝しているが、達彦はどうしても腑に落ちない。

お金は減っていないが、なぜか味噌が少々減っていたことも奇妙である。

三次試験の日、桜子ははやる気持ちを抑えかねて、かなり早めに試験会場となる奏楽堂に着いてしまった。

時間を持て余していると、風に乗ってジャズのメロディーが流れてきた。

桜子は、その音楽に吸い寄せられていった。

公園の一角に、サックスを吹いている男がいる。

瞬時に桜子は、体の芯からその音色に魅せられ、時がたつのを忘れた。

演奏が一段と盛り上がりを見せた時、いきなり壮士風の男が怒鳴り込んできた。

時局を考えれば、「メリケンの音楽」を演奏するのは「非国民」と非難する人間がいても致し方ない。

だからといって、力ずくで楽器を奪い取ろうとすることなど、桜子は見て見ぬふりはできない。

止めに入ったところを、男に突き飛ばされた。

「痛い…….いったー」

手を怪我した痛みが、桜子を我に返した。

実技の時間が迫っているではないか!走りに走り、ギリギリセーフで試験会場のドアを開けた桜子は、息もできないほど呼吸が乱れていた。

桜子は、怪我で血のにじんだ指で弾き始めた。

時折、激痛が走る。

試験官の中には西園寺の顔も見える。

緊張と焦りもあって、ついに桜子の指が動かなくなった。

指の怪我に気づいた達彦が援護射撃をしてくれるが、はたして西園寺は冷ややかだ。

「そんなことにならないように、試験に合わせて気力体力を整えておくのも、実力のうちだよ」

それでも再び演奏するチャンスを与えてくれた。

憑きものが落ちたように、桜子は本来の力を見せた。

だが、何をしでかしたかは、桜子自身がよくわかっている。

弾き終えた桜子は、虚しさと悔恨で憔悴しきっていた。

三次試験の合格発表者の中に桜子の番号はない。

予想された結果でも、桜子は茫然とその場に立ち尽くすしかなかった。

どこでどう時間を費やしたのか、桜子がマロニエ荘に帰ってきたのは夜になってからだ。

力なくランチルームの前を通り過ぎようとした時、「桜子」という名前が中から聞こえた。

「今まで置き引きで何人もひっかけたけど、あんなに簡単にだまされるやつ、初めてだ…….で、今日の実技で落ちるってほうに賭けてたのは……」

八州治の声だ。

八重、マリに冬吾も加わって、桜子、達彦、ハツ美が何日目の試験で脱落するか、賭けていたのだ。

桜子は怒りを爆発させて部屋に踏み込んだ。

「私たちが、音楽学校に受かるか落ちるか、賭けしとったの?ニコニコして、親切そうなフリして、しかも何よ!陰で置き引きなんかしとったの?」

もう一つ、桜子が打ちひしがれたのは、冬吾以外のみんなが、桜子が落ちるほうに賭けていたことだ。

この試験のために命がけで練習してきたというのに。

今さら慰められても許せない。

感情を高ぶらせる桜子に返ってきたのは、冬吾の信じられない一言だ。

「試験つのは、そったに命がけでするもんだべか。まんずお前は、はんかくせ、ほんづねおなごだな」

「ほんづね」とは、大バカ者という意味である。

あまりのことに、桜子は部屋に駆け戻ると、頭から布団を被って号泣した。

試験日程は終了したが、合格した達彦と同じ汽車で帰りたくはない。

桜子は岡崎に戻るのを一日先延ばしにした。

笛子たちには、夜、岡崎に帰った達彦から、桜子の試験の経緯が報告された。

どんな顔で桜子に「お帰り」を言ったらいいのか。

家族が沈痛な面持ちでいる頃、マロニエ荘のランチルームでは、桜子のことなどお構いなしにドンチャン騒ぎが始まっていた。

大声と騒音は我慢できても、ピアノの音だけはつらすぎる。

泣き尽くして枯れたはずの涙を呼び戻してしまう。

桜子の音楽への夢は、ついえてしまったのだ。

「ピアノはもう弾がねのが」

「弾きません」

冬吾は懐から一本の絵の具を出した。

わずかなお金しかない時は、食べるものより絵の具を買う。

空腹でもいい。

絵を描きたい。

「好きなもんだばやめられね。人に何言われてもな。そすたもんだあ」

だからこそ、八州治も八重もマリも、必死になって東京にしがみついている。

八州治は上野の美術学校にこっそりともぐり込んで、授業を受けてくるという。

「なんつっても美大にはモデルがいるし、絵の具も拾えるし。人の絵を見るのも面白いしな」

三浪して合格したハツ美は、急速に桜子に親近感を抱くようになっていた。

「東京音楽学校ってね、田舎から出てきて、一発で受かる人なんてあんまりいないのよ。東京で、音楽学校の教授にレッスンを受けて、少なくとも一年間は、みっちり勉強しないと」

「そう……そういうものなん」

桜子は自分の甘さに愕然とした。

岡崎でちょいと弾けたって、お山の大将だった。

合格の近道は有力なツテを使うことだ。

桜子が、岡崎でちょっとだけ会話した西園寺の名前を口にすると、ハッ美はグウと喉を鳴らした。

「そんないいツテ、利用しない手はないわよ」

桜子の心が大きく動いた。

だが、いつまでも東京にいるわけにはいかない。

桜子は、これが最後と奏楽堂の前にたたずんだ。

憧れの音楽の殿堂を脳裏に焼きつけておこう。

目に涙をにじませながらきびすを返すと、西園寺がこちらに向かってくる。

「ああ、そうだ。君の演奏」

西園寺は桜子を思い出して、足を止めた。

「よかったですよ。もう少しのところでしたね。ただし、三次試験の実技。あの時は、音楽を楽しむことを忘れていましたね。岡崎で聴かせてもらった君のピアノにはそれがあったのに、残念です。いいものを持ってるのに」

西園寺がコメントをくれた。

音楽への激しい未練が、胸の奥から突き上げてくる。

マロニエ荘では、桜子を心配して上京した笛子が待っていた。

「残念だったね、桜子。でも精一杯頑張ったんだから、恥ずかしがることなんかないよ」

笛子はいたわるように桜子の手をとった。

いったんは、しおらしく預けた手を、桜子は自分から離した。

「一年間ここで勉強して、もう一回、音楽学校を受験したい。お願いします。許してください」

笛子は一気に疲労の波が押し寄せるのを感じた。

あれほど約束したのに。

「家族の迷惑も少しは考えたらどうなのよ!」

「自分で働いて、生活費、稼ぐから」

笛子は、今後一切の援助をしないと、最後通牒を突きつけた。

そうすることで、桜子が折れるのを待ったのだ。

やがて、落胆が怒りに変わり、笛子は妹に背を向けた。

桜子の、たった一人きりの東京での闘いが、これから始まろうとしていた。

マロニエ荘には、同じ穴のムジナが身を寄せ合って生きている。

八重は親に勘当されている。

マリは十年も家に帰っていない。

そんな仲間に背中を押されて、桜子は臆する気持ちを奮い立たせると、西園寺を訪ねた。

「先生の弟子にさせてください」

西園寺は、拍子抜けするほど気さくに、桜子のレッスンを引き受けてくれた。

天にも昇る心地になった桜子は、後を任された執事から一回のレッスン料を聞くや否や、スーッと頭から血の気が引いた。

一日も早く働いてお金を稼がなくてはならない。

しかし、東京に身元保証人もいない桜子には、簡単に仕事は見つかりそうもない。

桜子はくたびれ果てた足を引きずってマロニエ荘に帰った。

何の気なしにランチルームの戸を開くと、数人の男たちに囲まれた裸の八重がいる。

八重はもともと、乳母日傘で育ったお嬢さんだという。

それが、生活費を稼ぐために全裸モデルをしている。

「あんだにも、あれぐれの覚悟、あるのが」

「あります」

目が合った冬吾に聞かれ、桜子はムキになった。

かなり無理している。

考えの甘さを見透かされてしまったことは認めざるを得ない。

結局、桜子は八重が紹介してくれた定食屋で皿洗いをすることになった。

ある日、その店にふらりと叔母の磯が現れた。

眉を曇らせる磯に、桜子は努めて明るい声を出した。

「アパートにね、ピアノがあるから、昼間練習できるんだよ」

健気に振る舞う桜子に、磯は封印した過去の扉に手をかけた。

東京は磯が青春を過ごした街だ。

扉の中の年月は、家族の誰も知らない。

東京に来た磯が呼び出したのは、鮎川というかつて愛人だった初老の男だ。

「お金がいるんです」

単刀直入に切り出す磯に、鮎川は一拍おいて、笑い出した。

十年前、別れる時に、お金などビタ一文いらないと啖呵を切った磯だったからだ。

磯は苦い思いを飲み下した。

桜子は西園寺に、レッスン料の工面がつかないことを、正直に打ち明けた。

ところが、西園寺はニコニコしている。

「お稽古代なら、半年分先にいただきましたよ。君の叔母さんという方から」

「……えっ」

マロニエ荘で、桜子は、磯と膝を突き合わせた。

「そんな大金、事情もわからずに受け取れんよ」

磯は一つ息をついた。

この一年、桜子も悩み苦しんで成長した。

不倫関係にあった磯と鮎川のことも理解してくれるだろう。

それに、磯にも身に覚えがある。

若い時の情熱は抑え切れないものがある。

「やらなきゃ後悔するの。やるだけやってみなさい。笛ちゃんには内緒よ」

「叔母さん」

桜子に、心強い味方ができた。

第7週「貧乏なんか怖くない」

純情きらり第7週「貧乏なんか怖くない」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

西園寺塾初レッスンの日、桜子が待合室のサロンに 案内されると、岩見沢るり子を中心に、令嬢風の娘たち が笑いさざめいている。

東京の高名な教授のもとに集 まるのは、生活も実力もレベルの高い人たちばかりだ。

その中で一年間、西園寺の弟子として修業をつみ、 再度受験に挑戦できるのだ。

『お父さんの一周忌には家に帰って、できれば笛姉ち ゃんと仲直りがしたい』
様子は、磯宛の手紙に感謝の気持ちと一緒に、近況

を書き綴った。

定食屋で食器を洗っていると、思いがけない客が二 人、やってきた。

達彦はともかく、るり子が何のため に来たのかというと―― 「西園寺塾、おやめになってくださらない」
これには桜子ばかりか、連れてきた達彦も唖然とな った。

るり子の価値観からすると、貧乏人は音楽家に なれないのだそうだ。

桜子は以前、かねから「安月給取りの娘」と罵倒さ れたことがある。

仕送りでのんびりと学校に通う達彦 からも、るり子と同じ匂いがする。

「ほいでも私、負けんからね。

何の苦労もせんで、勉 強だけしとる人には絶対に負けん」
屈辱感と悔しさで意気消沈した桜子に、笛子からの 手紙が届いた。

仲直りの期待に目を輝かせた桜子の顔 が、次第に曇っていく。

『一周忌に帰ってくる必要はありません……』 しかも笛子の意向で、磯からの援助は、これまでに もらった分のみで打ち切られるという。

桜子に残されたのは、歯を食いしばってピアノを弾 くことだけだ。

逆境に屈するわけにはいかない。

だか らこそ練習の成果のありったけを、桜子は西園寺のレ ッスンにぶつけた。

西園寺は桜子を窓辺に誘うと、植え込みの隙間に咲 く小さな野の花を見せた。

「野に咲く花は美しい。

逆に、一分の隙もなく整えら れた花壇は美しくない。

あなたの今日の演奏。

あれは まるで真四角な花壇ですね。

面白味も色気もない」 「……はい」
Saiwa
西園寺の表現は、ピアノの響きのように優しい。

だが その指摘は、矢のように鋭く桜子の胸に突き刺さった。

演奏の面白味、音の色気。

どうしたら自分の指から 生まれるのか。

桜子は悶々としたまま疲れ果て、ピア

ノに突っ伏して眠ってしまった。

「根の詰めすぎだな」
いつもは辛辣な冬吾が、桜子をニュー・オリンズと いうダンスホールに連れ出した。

店内に一歩足を踏み入れたとたん、さざめく夜の光 と煙草の煙、生のジャズ・バンドの演奏が、桜子を押 しつぶすように襲ってきた。

初めて目の当たりにした 東京の大人の世界だ。

昭和初期。

東京で隆盛を誇ったダンスホール。

そし てジャズ。

その最後の残光が、桜子を射抜いたのだ。

しかも曲は、「セントルイス・ブルース」。

桜子と父の 思い出の曲だ。

ステージに見覚えのある男が立った。

音楽学校の受 験の日、上野公園にいたジャズマンだ。

秋山均といっ て、ジャズ界では有名な奏者だという。

秋山の演奏にうっとりと聴き入りながら周囲を見回 すと、マリが見事な踊りを披露している。

いくら踊りが上手でも、若い新人ダンサーが入って くると、客からの指名が減ってしまう人気商売のつら さ。

完全歩合制のダンサーにとって、指名の増減は即、 収入につながる。

ダンサーとして崖っぷちに立つマリは、生活のために 好きでもない男の愛人になり、養われようとしていた。

ふだんは何かと干渉する八州治、ハッ美も、「ほっ とくしかねえだろ」と、静観の構えだ。

励まし合うことはいとわない。

でも、どう生きるか を決めるのは、自分の責任なのだ。

ダンスホールに行った夜から、桜子はジャズ熱にと りつかれた。

桜子がしばしばジャズを聴きに行ってい ることが、達彦の耳に届いた。

「ダンスホール! …….ですか?」
達彦が血相を変えるのも無理はない。

当時、いかが 純一 わしい場所ととらえる人も多かったのだ。

純情きらり

マリが自暴自棄になりそうで気にかかる桜子は、心 細い財布の中身をはたいて、指名のチケットを買った。

ところがマリから拒まれた桜子は、チケット欲しさの 男性ダンサーと、あれよあれよという間に一緒に踊っ ていた。

達彦が店にいるとは、夢にも思わなかった。

「なんでこんなことやっとるんだよ!」
カーッとなった達彦は、桜子をそのダンサーから引 き離した。

視野の隅にマリが映る。

やはり桜子に悪影 響を及ぼしているのは、マロニエ荘の連中に違いない。

達彦は、アパートの住人たちを悪し様に非難した。

彼らはもう桜子の友だちだ。

それを頭から否定され、 桜子はキッとなって反撃した。

「みんな、生きるために必死で頑張っとるの。

私だっ て頑張っとる。

ふしだらなんて、決めつけんで」
桜子には、何のやましさもなかった。

達彦のほうは腹の虫がおさまらず、かといって桜子 を突き放すこともできない。

それならばと決めたのが、 自らがボロアパートに乗り込む、いや、移り住むことだ。

「一体、何、考えとるの?」
みんなの悪口を言ったその舌の根も乾かぬうちに一 緒に住もうとは。

非難する桜子を、わざとムッツリと かわしていた達彦だが、とうとう言い放った。

「だから俺がここに来たのは、お前がおるからだよ!」
それでいて恋愛感情ととられるのがわずらわしく て、監視役などとあわてて付け加えた。

「桜子は、ますます不愉快になる。

桜子には仕事の前 と後の一、二時間しか練習時間がない。

不機嫌ついで に桜子は、ランチルームのピアノの前から達彦を押し のけた。

「私がおる間は、このピアノは私のもんなの。

そこ、 どいて」
桜子と達彦が早くもケンカしているのを、八州治た

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ちは野次馬の目を輝かせて見ている。

たしかに、マロニエ荘の住人たちは一癖ある。

八重 はいとも簡単に裸のモデルを引き受けるし、夜になる と花札に興じる住人たち。

桜子は同じ部屋の奥でピア ノに集中している。

やってられないと達彦がランチルームを出ようとす ると、いつの間にか玄関にいたマリが、愛人の熊井と 濃厚キスの真っ最中だ。

「やっぱり変だ。

絶対、変だよ、こいつら」 ぼやきながら振り回されている達だった。

そして、マリのダンサー最後の夜がきた。

マロニエ 荘からも去っていく日だ。

指名のこないマリは、ひそ やかな壁の花になっている。

桜子が胸を痛めていると、背後に達彦が立った。

達 彦は一つの決意を秘めていた。

「ダンスホールへの出入りが学校に発覚すれば、厳し い処分を受ける。

それを承知のうえで、桜子を守り、 桜子が夢中になっているものを共感しようとして来て いるのだ。

やがて閉店時間となった。

誰もいなくなったホール に、マリはポツンと立った。

ここで輝くような時を過 ごしたこともあった。

「最後のダンス、私と踊ってください」
桜子が前に立つと、マリは桜子の手をとり、ゆっく りと踊り始めた。

桜子は夢を放すまいと懸命に手を伸ばし、マリは夢 のかけらを自ら手放そうとしている。

二つの思いが重 なり、どちらも感無量である。

ついにマリは、愛人になるのをやめた。

怒り狂う熊 井から、桜子、達彦とともに逃げ出したのだ。

マロニエ荘で、冬吾たちがしんみりと酒を飲んでい ると、威勢のいい歌声とともに、桜子、マリ、達彦が ランチルームになだれ込んできた。

酔ったマリの目が、

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涙で潤んでいる。

「気がついた。

ホントに怖いのは、貧乏じゃない。

一 人になることだって」
お金がなくて、食い詰めて、野たれ死ぬにしても、 仲間がいる。

桜子や八重、ハツ美、冬吾たちは、そし て達彦までもが、同じ思いを抱き、温かい微笑を交わ し合った。

翌朝、玄関を出た桜子の足がつんのめるように止ま った。

マロニエ荘の前に、笛子が立ちはだかっている。

第8週「初めての連弾」

純情きらり第8週「初めての連弾」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

岡崎の有森家では、桜子をどうするか、徳治郎も交 えて意見が紛糾していた。

仕送りがもらえなくても家族の絆は大切にしたい。

そう思った桜子が近況を知らせた手紙には、『ダンスホ ールに行ってきました』と、悪びれずに書いてある。

さすがに仰天した笛子は、桜子を連れ戻さなくては ならないと駆けつけてきたのだ。

– マロニエ荘に招き入れられた笛子は、口の悪い八州 治や冬吾を前に、ギョッとしたり、カーッとなったり と身の置きどころがない。

桜子が働く店に案内してもらい、愕然とした。

汚い 定食屋だ。

このままでは妹は身を持ち崩してしまう。

「この東京でしか学べんことがあるんです」
桜子の気持ちを代弁したのは達彦だ。

笛子の疑惑や 不安は、ほんの数日前まで達彦も抱いていたものだけ によく理解できる。

「二人の会話を盗み聞きしていた八重、ハッ美、マリ、 八州治、そして冬吾も黙っていられなくなった。

みん なで支え合っていることを笛子に訴えて、桜子の肩を 持ったのだ。

突然、徳治郎の野太い声が玄関から響いた。

勝手に

踏み入ってきた徳治郎は、傲然と住人たちを見回し、 仁王立ちになった。

桜子は怯むことなく、徳治郎に土下座した。

「もう少しだけここにいさせてください」 「僕からもお願いします」
達彦、徳治郎にとっては山長の跡取り息子が言葉を 添える。

いかな徳治郎も困り、萎えそうな気持ちを奮 い立たせた。

「待って、おじいちゃん。

私に免じて、桜子を許した げて」
徳治郎も桜子も達彦も、そこにいた全員が意外な目 を向けた発言の主は、笛子である。

来春の受験までと いう猶予を与えてくれたのだ。

「おじいちゃん。

私、おじいちゃんやお姉ちゃんを後 悔させるようなことはしやあへんよ。

立派な音楽家に なってみせるから」
とりあえずの安心を土産に、翌朝、笛子と徳治郎は 岡崎に帰っていった。

せみしぐれ 桜子は音楽に邁進する日々を送り、季節は蝉時雨の 夏となった。

西園寺邸の木々も緑におおわれている。

ところが桜子のピアノは、植物が生い茂るようには 上達できずにいた。

桜子が弾いている間に、西園寺は しばしば午睡に陥ってしまう。

西園寺は自分のことなど相手にしていないのではな いか。

桜子は不安でたまらない。

そんなある日の午後、銀座のカフェで、達彦とレッ スンの話をしていた桜子は、少し離れた席の女性に目 が留まった。

女学校時代の親友、薫子ではないか。

達彦への恋文をめぐる騒動や、薫子の反戦への意識 で危ない橋を渡ったこともあった。

現在の薫子は自立し、東京の出版社で編集の仕事を する若き職業婦人になっているという。

純 薫子が思いがけない名前を口にした。

情きら
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「斉藤先生にお会いしたんだよ」
桜子が婚約までした初恋の人だ。

斉藤は、実家の破 産の件で東京の裁判所に来ているのだという。

薫子は 別件の取材で偶然、斉藤を見かけたのだ。

桜子の心臓は、切なくキュンと鳴った。

桜子と斉藤を再会させるという薫子の好意に、桜子 は思い悩んだ。

会えば、音楽だけにかけると決めた心 が乱れてしまいそうだ。

追い討ちをかけるように桜子を悩ませたのは、西園 寺がドイツ演奏旅行の同行を、達彦に打診したことだ。

達彦が高く評価されていることは、桜子にもわかって いる。

西園寺のレッスン時の態度が、桜子と達彦とで は明らかに違うこともはっきりした。

「この悔しさから立ち直るためには、内面から湧きい ずるエネルギーが必要だ。

桜子はジャズに情熱を求め て、秋山にすがった。

「ジャズが弾きたいんです。

教えてください」 「ジャズは男の世界だ。

女に教えることなんかないよ」
秋山はつれなく答えた。

それに、日本ではもう、ジ ャズは演奏できなくなるかもしれない。

こうして桜子がダンスホールに出入りしていること を、るり子が西園寺の執事、松尾の耳に入れてしまっ た。

眉をひそめる松尾とるり子に、その場に居合わせ た達彦は焦った。

西園寺が知る前に、なんとかことを おさめなくてはならない。

「もう行くの、やめろよ」
「うるさいよ、達彦さんは! 私は大人なんだよ。

自 分のやることは自分でわかっとる。

一つ二つ年上だか らって偉そうにせんで」
この数か月で、桜子には働きながら勉強をしてきた たくましさが身についていた。

それでいて、斉藤のことでは気弱になる。

薫子は銀座のカフェで夕方、斉藤と会う約束を取り
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つけてきた。

時間ギリギリまで、桜子は迷った。

上達しないピア ノ、桜子を拒んだ秋山。

夏の訪れとともに、桜子は四 面楚歌の状況にあった。

純粋に音楽について語り合い、斉藤を無心に好きに なった思い出が無上に愛しく感じられた時、桜子は部 屋を飛び出していた。

それなのに、約束した店に会いたい人の姿はない。

懐かしい笑顔の代わりに、一通の手紙を薫子は預かっ ていた。

音楽への道を貫こうとしている桜子の決意が くじけることを、斉藤らしく懸念してくれたのだ。

「後ろを振り向かず、前を向いて頑張っていってくだ さい。

心から、あなたの前途の幸福を祈り、応援して います」
桜子は、斉藤の深い思慮に感銘を受けた。

「このほうがかえってよかった」
それでも会えなかった寂しさは否めない。

ひっそり と泣いている桜子に、何の力にもなれない達彦は切な く、胸がつぶれそうだ。

そこに冬吾が、ついとやってきた。

「ンだば、まだお前は、男どおなごのこどはなんもわ かってねんでねが」
ムッとする桜子を、冬吾は人生勉強と称して映画鑑 賞に連れ出した。

すぐに桜子は、スクリーンの世界に のめり込んだ。

ふさぎ込んでいた心が解き放たれるほ どの感動があった。

桜子の夢は輝きを取り戻しそうだ。

次のレッスン日、桜子は意気揚々と西園寺のサロン に入ると、譜面を開いた。

しかし肩透かしをくらわされたように西園寺は不 在。

そればかりか松尾は、ダンスホールに出入りして いる桜子を門前払いをするかのように追い返した。

東京にいるのに、学ぶ場所をなくしてしまった。

100
意のまま、桜子は再び秋山を頼った。

「ここには、私の好きな音楽があるんです」
とうとう達彦は、桜子をきつくとがめた。

性懲りも なくダンスホールに出入りするのは自分で自分の首を 絞める行為だと、業を煮やしたのだ。

桜子は達彦の意気地のなさを責めて反撃した。

周囲 の顔色をうかがっているから、母親のかねにもドイツ 行きを言い出す気概がない。

「所詮、おぼっちゃんなんだよ、達彦さんは」 「そうじゃないよ!」
達彦の背には、店や従業員の生活がかかっている。

すべてを放棄して、好きな気持ちだけで突っ走るわけ にはいかない。

達彦が苦しいのはそれだけじゃない。

「君は俺の気持ちを全然わかってない」
瞬間、桜子と達彦の心が触れ合った。

たまらず、達 彦は桜子を抱きすくめていた。

桜子に、甘酸っぱいものがこみ上げてくる。

しかし、現実は恋愛どころではなく、桜子は大きな 危機に瀕していた。

桜子を西園寺塾から除名すべきだ と、塾の生徒たちの署名が集められていたのだ。

「有森がダンスホールに行ったのは、遊びではありま せん。

そこに素晴らしいジャズの演奏家がいて……」
西園寺に対し、達彦は恥じることも、臆することも なく、音楽への熱情がほとばしっている桜子の気持ち をとうとうと語った。

西園寺はすぐに笑顔になった。

ヨーロッパでは、ダ ンスは上流階級のたしなみだ。

それに西園寺塾は、音 楽学校ではない。

納得できないるり子が、桜子を「才能のない生徒」 と決めつけた時、西園寺は桜子の潜在能力を証明して みせた。

たぐいまれな聴力と、音楽を即興でアレンジする特

せんべつ
別な能力だ。

「ほかの誰にもない才能です」
西園寺に太鼓判を押され、桜子自身が驚き、感動し ていた。

西園寺の指導の礎は、ジャンルにとらわれず、 可能性を秘めた若い芽を成長させ、開花させることに ある。

それならばなおさら、達彦には西園寺に同行してド イツで学んできてほしい。

達彦は絶好の機会を逃そう としている。

桜子は定食屋で働いて得た給料をはたい て、達彦に帽子を買った。

ドイツ行きの餞別である。

今度は、桜子が達彦の力になりたかった。

プレゼントを開いた達彦が、ピアノの練習をしてい る桜子の隣に腰を下ろした。

「ありがとうな」 「私は、達彦さんの味方だよ。

これからもずっと味方 になるでね。

誰に何と言われても」
ファーストキスは桜子から、かすかに達彦の唇に触 れた。

そのまま達彦に肩を抱き寄せられると、桜子は 素直にそっと寄り添う。

それからー。

「そこの弾き方、違う。

そうじゃないだら」 「いいじゃん! これで」
桜子と達彦は肩を寄せ合いピアノの連弾をしている にもかかわらず、丁々発止とケンカしている。

マロニ 工荘は平穏でほのぼのとした雰囲気に包まれた。

岡崎では、新しい生活が一つ始まろうとしていた。

居候をやめて有森家を出た磯が、洋裁店を開いたのだ。

商売が軌道に乗れば、桜子や大学に進学する勇太郎に 仕送りもできる。

妹情きらり
調子に乗った磯は、達彦の下宿を知っていると、か ねに口を滑らせてしまった。

マロニエ荘から外出しかけた達彦の心臓は、いきな り縮み上がった。

かねがいる!
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夏の嵐を予感させるような、何の前触れもないかね の出現である。

第9週「今宵、君と踊ろう」

純情きらり第9週「今宵、君と踊ろう」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

かねは胡散臭そうに、マロニエ荘の外観と出入りす る住人たちを値踏みした。

達彦の話では、紳士淑女ば かりが住んでいるはずなのだが。

「どこが痛 洒な洋館なの!」
いきなり噛みついて、中に入ろうとする母親の矛先 をかわそうと、達彦は「西園寺先生のところに行く」 と口からでまかせを言った。

ところが、かねは渡りに船とばかり、挨拶をしたい からと、達彦についてきてしまった。

西園寺にとっては突然の訪問となった。

そのせいか、 達彦の母親がわざわざ上京して挨拶に来た理由を、西 園寺は誤解した。

達彦がドイツ演奏旅行に同行する件 だと思い込んでしまったのだ。

達彦はまだドイツ行きのことを、かねに話していな い。

危惧したとおり、これまで低姿勢だったかねは、 態度を硬化させると猛然と西園寺に食ってかかった。

「うちの息子は、店の大事な跡取りなんです。

将来音 楽家なんて、ほんなこと考えてもらっては困るんです」 かねの剣幕に、温厚な西園寺も辟易となる。

いつもは賑々しいマロニエ荘の怪しげな住人たち も、噂にたがわぬかねの登場に、達彦の危機を救おう と紳士淑女を装うことにした。

とはいえ、所詮、付け焼き刃のボロが出そうになる。

ボロをごまかそうとすれば、ますますドツボにはまる。

ドタバタになるのは必至である。

桜子がこっそりと自分の部屋に入ろうとしたことま でが、バレてしまった。

憤ったかねは、桜子に躍りかかった。

101

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DURA
うれん
「違うんだ、母さん」。

達彦はかねを止めようとした 勢いで叫んだ。

「俺が有森を好きだから」。

「な….なんだって」
狼狽したかねが、また口にしかけた言葉に、とうと う達彦が切れた。

「いい加減にしてくれよ、二言目には跡取り跡取りっ て!」
部屋で息子と机を並べていても、かねは眠れない。

国家総動員法が発令され、味噌は国の許可のもとでし か造れなくなっていた。

それに加え、若い職人に赤紙 が届き始めている。

すっかり気弱になったかに見えたかねだが、やはり 一筋縄ではいかない。

翌早朝、かねは、とっとと達彦 を連れ帰る支度をしていたのだ。

とうとう桜子は、黙っていられなくなった。

「達彦さんのこと、ドイツに行かせてあげてください。

達彦さん、ホントに才能があるんです」 かねはハッシと宿敵の桜子を睨みつけた。

そこへ、のこのこと現れたのは拓司である。

岡崎で ハメをはずすまで飲んだ酒に調子づき、息子に会いた くなって、夜汽車で東京まで来てしまったという。

拓司は、息子のドイツ行きの話を聞くと「達彦とサ シで話がしたい」と、いつになくキッパリと、かねを 寄せつけない強さを示した。

「男親の出番だ」 かねは不承不承、先に帰ることになった。

息子と向かい合うと、拓司は達彦が自分の道を貫く ことを望んだ。

かねのことは、自分が時間をかけて説 得すると請け負ってくれたのだ。

「お前は好きな道を行ったらいい」 「! …父さん」 桜子は、拓司と源一郎を重ねて涙ぐんだ。

さっそく西園寺に報告しようと、桜子と達彦がそろ

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DURA
うれん
って訪ねると、西園寺は浮かない顔をしている。

西園寺は軍歌の依頼を受けていた。

軍の仕事を断れ ば学校に迷惑がかかる。

西園寺は学校に辞表を出した。

そうなるともう、ドイツ旅行どころではない。

– マロニエ荘に戻ると、新聞や雑誌の記者がアパート の正面に押しかけている。

冬吾の絵が、美術界で有名 な賞を受賞したのだという。

記者たちの中に、薫子の姿もあった。

「先日もお話ししました大陸への取材旅行、ぜひご参 加願えないでしょうか」
八州治にすれば、ご馳走のようないい条件の仕事だ。

しかし、冬吾の顔色はみるみる曇った。

「そっだな仕事は、俺は受げね」 軍部に協力する戦争の絵を求められていたからだ。

薫子は戦争には反対だったはずだ。

遠慮がちに薫子 に問いかけた桜子は、耳を疑った。

「でも日本はもう戦争を始めてしまったのよ。

私一人 がヤイのヤイの言ったところで、どうにかなるもので はないわ」
たしかに、戦争の不気味な影が庶民の生活をおおい 始めていた。

そして戦争をどうとらえるか、それぞれ が人生の岐路を迎えることになる。

八州治は薫子の出版社に自分の絵を売り込み、冬吾が 断った戦争の絵を描くために大陸に渡ることになった。

桜子は、戦争に向かっていく流れの速さに何もでき ない無力さを虚しく感じた。

いや、できることもある かもしれない。

桜子と達彦は、軍歌の作曲を断った西園寺の辞表撤 回を求める署名運動を開始した。

「俺も署名していいかな……」
ペンをとったのは秋山である。

二十年も前に、秋山 の才能を見出したのは西園寺だった。

秋山は資金援助 まで受けながら、恩師に顔向けできない不義理を作っ

たり、連絡を断って久しいという。

桜子たちの署名運動に、西園寺は自分を慕う才能を 育てる責任を痛感する。

「僕は軍歌を書きますよ。

軍部の要求に合わせた勇壮 なものを」
マロニエ荘にも重い空気がただよっていた。

八州治 が大陸に行くことで、冬吾に憂鬱の翳が広がった。

「描ぎたくない絵を描くと心がすさむ」
西園寺も、気の進まない軍歌を作曲する。

署名運動 が招いた結果だけに、桜子は心苦しい。

西園寺は軍人たちを自宅に招いて、軍歌の発表の場 を設けた。

ところが、横柄で無神経な軍人たちに怒り が湧き、どうしてもピアノを弾く気になれない。

軍人たちは次第に不機嫌になっていく。

西園寺の窮状を救ったのは秋山だった。

譜面を読ん だ秋山のサックスから、いかにも軍楽曲らしい華やか なマーチが繰り出される。

血湧き肉躍る名曲が誕生した瞬間だった。

『チチキトクスグカエレ』の電報を達彦が受け取 ったのは、それから何日か過ぎた日のことだ。

そしてその翌日、冬吾を探して東北訛りの女性がマ ロニエ荘にやってきた。

居留守を使った冬吾は、それ っきり消えてしまったのだ。

達彦、八州治、冬吾がいなくなったマロニエ荘は、 火が消えたような寂しさだ。

達彦からは何の音沙汰も ない。

桜子は拓司の見舞いをかねて、岡崎に帰ってみ ることにした。

山長では、心臓の病に倒れた拓司が最期の時を迎え ようとしていた。

悴しきったかねが、枕元で泣き崩 れている。


拓司は、達彦に何かを言い遺すように唇を動かした。

「頼んだぞ」、そんなふうにも見える。

そんな渦中に、桜子は山長を訪ねてしまった。

ピア
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ノや西園寺の話を切り出す桜子に、達彦は気もそぞろ で冷ややかだった。

「帰ってくれないか。

今、君と話してる余裕、ないん だ。

ごめん」
拓司の臨終に接し、達彦は初めて自分が喪主なのだ と自覚した。

店の帳簿も初めて見た。

仕入れも滞り、 深刻な状況にあることに愕然とする。

店のことは右も左もわからない達彦に、拓司のノー トが遺されていた。

仕込みの分量から店のことまでが 詳細に記されている。

生半可なことでは身を立てられない音楽の道。

もし 達彦が、刀折れ矢尽きて岡崎に戻った時に渡すように と、古くからの職人に託されていたノートだ。

影の薄かった拓司が職人たちに信頼され、店の屋台 骨を支えていたのだ。

父という大きな存在を失ったこ とに、達彦は慟哭した。

達彦につれなくされ、とぼとぼと帰った桜子を、有 森家のきょうだいは温かく歓迎した。

久しぶりに囲む 賑やかな食卓。

拓司の訃報に触れたのは、夜になって からだ。

家族とともに拓司の通夜の席にあがろうとする桜子 を見るなり、かねが立ちふさがった。

「待って。

あんたはあがらんで」 山長の不幸の元凶は桜子にあると思っている。

「お線香、一本でいいんです。

あげさせてください」
かねは頑なに拒んだ。

しかも達彦までもが、桜子に 背を向けてしまったのだ。

どうこく
桜子と達彦に恋が芽生えかけていることを、笛子は うすうす感じていた。

可哀想だがこの恋は実らない。

大店の跡取りと桜子とでは、住む世界が違うのだ。

「達彦さんは音楽家になるんだよ。

お店は継がんわ」
音楽を諦めないと言った達彦を信じること。

それだ けが、桜子にとって一縷の望みだった。

第10週「夏の日の別れ」

純情きらり第10週「夏の日の別れ」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

拓司の葬儀から何日か過ぎたある日、達彦が桜子に 会いに来た。

山長の当主として、拓司の遺志を継ぐ決 心を伝えに来たのだ。

「親父が死んで、何もかもが変わった。

お袋がしっか りしとるようで、案外頼りないこともわかったし……」
桜子の胸にぽっかりと空洞ができた。

達彦の中ではまだ、桜子への思いと拓司の遺志がせ めぎ合っている。

急に気弱になった母が哀れでもある が、桜子を心から追い出すことはできない。

達彦の真意を、桜子も測りかねていた。

何も手につ かない。

お互いの迷いが絡み合ったように、二人は神 社の境内で偶然に出会った。

「俺、有森とこのまま、終わりたくない」
桜子だって達彦と会いたい。

だが、かねの目がわず らわしくて、容易に連絡もとれない。

桜子は境内の木 に結ばれた紙に目を留めた。

「結び文。

いつどこで会おうって、紙に書いて結んど くの。

ね」 ロマンチックな提案に二人が微笑みを交わしている と、背後の祠の戸がギーッときしんだ。

不気味な影が ぬーっと現れ、桜子は悲鳴をあげた。

「なーにたまげでる。

俺だ」 「……冬吾さん」
これより遡ること数時間。

有森家に一宿一飯を求め て、薄汚れた男が桜子を訪ねてきた。

マロニエ荘を出 て放浪していた冬吾だ。

一人で家にいた笛子は、冬吾 を怪しんで追い払ったのだ。

冬吾を連れ帰った桜子と笛子が口論しているのを横 目に、当の冬吾はいつの間にか書斎に入っていた。

源 一郎の遺した鉱物を、宝物でも見つけたように熱心に

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描いている。

笛子ばかりか杏子も勇太郎も、冬吾の邪 魔をするのが何かはばかられ、冬吾はそのまま有森家 に居ついてしまった。

桜子が東京に帰る時には冬吾も一緒だろう。

それま でだと、笛子は我慢することにした。

ところが桜子は「八月一杯はこっちにおるから」と 涼しい顔をしている。

西園寺は演奏旅行中だし、達彦 が岡崎にいるからだ。

さっそく達彦からの結び文があった。

桜子は元気百 倍で、指定された喫茶マルセイユのドアを開けた。

「久しぶりにピアノ、聴かせてよ」
マスターの軽い一言に、達彦はためらった。

ピアノ を弾くことに、禁忌を犯すようなジレンマがある。

この日も陽射しが強い夏の朝である。

笛子は着物の裾を尻はしょりして、勢いよく井戸水 を流しながら洗濯を始めた。

冬吾は、肌を露出した働き者の笛子を美しいと眩し く見つめ、部屋に戻ると、そのままをデッサンした。

「何ですか、これ」 笛子は肌も露な自分の絵に赤面した。

冬吾は、なぜ笛子がデッサンを「いやらしい」と激 怒しているのか皆目わからないまま、有森家から追い 出されてしまった。

きんき
桜子が達彦との逢い引きから戻ってくると、冬吾が いない。

笛子は鉄面皮に平静を装っている。

「反対なの?お姉ちゃん、私のやることには何でも 反対するもんね」
感情を高ぶらせた桜子は、こっそり達彦と会ってい たことをぶちまけた。

「達彦さんと一緒になるっちいうことは、音楽を捨て て山長の女将になるってことなんだよ。

あんたにその 覚悟はあるのんか? 桜子」 「ほんなこと、わからんよ」

ひょうのう
姉だからこその笛子の心配にも、桜子はもう聞く耳 を持たず、冷静さを失うばかりだ。

その後、いくら待ってもマルセイユに達彦は来なく なった。

神社に結び文もない。

落胆のため息がもれた 時、桜子の背後から咳が聞こえた。

祠の中で、冬吾が 高熱を発していたのだ。

有森家で寝ついてしまった冬吾の額に、笛子は氷襲 を乱暴に置いた。

心配しているのか怒っているのか判 断がつかないが、ともかくテキパキとあれやこれや面 倒を見ている。

笛子の剣幕にのまれて、冬吾は素直に言いなりにな っている。

仕事を持ちながら、家中のことに気を回し ている笛子を、冬吾は素朴な言葉でほめた。

笛子もあながち悪い気はしないが、デッサンで描か れた「変な絵」だけは許せない。

釘をさした笛子が少 し部屋を離れた隙に、冬吾は姿を消し、書き置きだけ が残されていた。

『俺は、変な絵を描くのはやめられない。

だから出て いく冬吾』
桜子にとがめられても、笛子なりに親身に世話をし たのだ。

これ以上はどうしようもない。

何日ぶりだろうか、達彦からの結び文に、桜子は胸 をときめかせてマルセイユに行った。

「例えば俺が、嫁に来てほしいって言ったら」
「絶句する桜子に、達彦はすぐに後悔した。

返事は最 初からわかっていた。

桜子だって、さよならはしたくない。

桜子の心が激 ~ しく葛藤していた。

涙が止まらない。

達彦が好きなの に、音楽を諦められない自分にまた泣いた。

憔悴しきった桜子に、笛子はピアノを趣味にするこ とを勧めてみた。

それなら、達彦を失わずにすむかも しれない。

らりあるか 純情き、
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桜子は頷けない。

東京で出会った人は、みんな一生 懸命だ。

冬吾もその一人である。

「好きなことに、自分のすべてをかけて頑張る素晴ら しさを、私はあの人に教わった」
それなら、達彦とはもう会わないほうが桜子のため だ。

笛子はあえて厳しい態度をとった。

「桜子。

あんたもう、東京に帰ったら」 「お姉ちゃんのバカ」 笛子はかねとの確執も懸念していたのだ。

実際、かねは、達彦がピアノと桜子への未練を断ち 切れないことに危機感を募らせていた。

桜子が山長に 入る気にでもなったら取り返しがつかない。

かねは達 彦の嫁候補に目星をつけた。

桜子が山長の前を通りかかると、華やかな振袖を着 た娘と背広姿の達彦が並んでいる。

いてはいけない場 面に出くわした。

わかってはいても、桜子は金縛りに あったように動けない。

達彦は茫然と立ち尽くす桜子に気づき、逡巡した。

瞬の後、苦悩をよぎらせて顔を背けた。

達彦がどんどん遠い人になっていく。

何も説明しなくても、傷ついた桜子を家族がいたわ ってくれる。

そのことがかえって桜子の居心地を悪く させる。

二、三日のうちに岡崎を出よう。

それまでに 冬吾を見つけて、風邪を治してあげなくては。

桜子に責められるまでもなく、笛子も冬吾が気にな らなかったわけではない。

神社に行ってみると、祠の 中にスケッチブックがある。

開いたページには、空に 広がる木々の枝と木漏れ日が生き生きと描かれてい る。

その瑞々しい絵に、笛子は強く惹きつけられた。

もめ合う声に顔を上げると、巡査が冬吾を不審人物 として連行しようとしているところだ。

「私の知り合いです」 笛子はとっさに冬吾をかばっていた。

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純正
コーヒーを前に冬吾と向かい合っても、奇妙な間合 いが邪魔をして、笛子は何を話していいか困惑した。

「私、桜子が苦手なんです」
不意に口を突いて出た。

桜子によかれと思っても、 ことごとく反発され、対立してしまう苛立ちを、笛子 はいつしか一人で喋っていた。

「冬吾は軽い相槌を打ちながら聞いている。

人の心を ほぐしていく不思議な優しさがあった。

冬吾の無事を一番喜んだのは、もちろん桜子である。

達彦とのことも、冬吾になら包み隠さず話せる。

「男と女はなんぼジタバタして、そっぽ向いで別れよ うとしたって、くっつくものはくっつく」 「そうかな」 「くっつかねえものはくっつがね。

んだから心配して も無駄だ」
元気づけてくれているのかどうか。

桜子は久しぶり に屈託なく笑った。

マルセイユの窓越しに、達彦は笑い合う桜子と冬吾 を見つけた。

桜子を深く傷つけてしまったことに、い たたまれなくなり店を抜け出してきたところだった。

達彦は自分に鞭打つように仕事に集中した。

桜子に は、見知らぬ人のような態度をとる。

二人の気持ちがすれ違っている隙に、かねは次の手 を打ってきた。

磯の店で、お嫁さん候補の服をあつら えようというのである。

「無神経にもほどがあります」
磯はキッパリ断った。

かねは当てつけのように「わ けのわからん男」が有森家に寝泊まりしていると、冬 吾のことを皮肉った。

事情を知らない磯は、「わけのわからん男」をチェッ クしようと有森家に行き、すっかり冬吾のペースには まってしまった。

笛子は甲斐甲斐しく「芸術家」冬吾の身の回りに気

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を配り、冬吾も自然にそれを受け入れている。

その夜は、徳治郎も加わって、宴会のような賑やか さになった。

笑ったり手拍子を打っても、桜子の心に は寂しい風が吹いていた。

達彦のことは、桜子が自分でけじめをつけるしかな い。

気がかりは笛子のことだ。

「お姉ちゃん、お父さんが死んでから、自分が親代わ りになろうとして、えらい頑張っとるけど、本当は寂 しいんです」
桜子は、姉を冬吾に託したかった。

「絵描きつうのは、一つどこには住まねえもんだ」 冬吾を拘束することは誰にもできないのか。

東京に戻る日、桜子は汽車に乗る前に達彦の姿を見 納めておきたかった。

山長の店先に、短期間にすっか り主人らしくなった達彦がいる。

「ごめんな」 「ううん。

私こそ、ごめん」
桜子は音楽を諦められないことを、達彦は桜子の期 待に背いてしまったことを謝った。

わだかまりは氷解 し、これ以上、言葉はない。

涙があふれるだけだ。

お互いの将来の健闘を祈って、二人は別れた。

背中に達彦の視線を感じる。

達彦との思い出が涙を 呼ぶ。

ずっと競い合い、肩を並べて歩んできた道を、 これから桜子は一人で進むのだ。

東京への新たな旅立ちだった。

第11週「キューピッド志願」

純情きらり第11週「キューピッド志願」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第12週「絆が試されるとき」

純情きらり第12週「絆が試されるとき」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第13週「私には今しかない 」

純情きらり第13週「私には今しかない 」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第14週「若女将の試練」

純情きらり第14週「若女将の試練」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第15週「別れのコンチェルト」

純情きらり第15週「別れのコンチェルト」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第16週「磯おばさんの秘密」

純情きらり第16週「磯おばさんの秘密」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第17週「希望は捨てません」

純情きらり第17週「希望は捨てません」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第18週「いつかまたピアノは響く」

純情きらり第18週「いつかまたピアノは響く」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第19週「ショパンよ母に届け」

純情きらり第19週「ショパンよ母に届け」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第20週「来ぬ春を待ちわびて」

純情きらり第20週「来ぬ春を待ちわびて」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

第21週「生きる歓び」

純情きらり第21週「生きる歓び」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第22週「さよならを越えて」

純情きらり第22週「さよならを越えて」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第23週「思いがけない帰還 」

純情きらり第23週「思いがけない帰還 」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第24週「あなたがここにいる限り 」

純情きらり第24週「あなたがここにいる限り 」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第25週「夢に見た演奏会 」

純情きらり第25週「夢に見た演奏会 」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています

 

第26週「いのち、輝いて」

純情きらり第26週「いのち、輝いて」のネタバレあらすじは、東京の音楽学校に行きたい桜子のために定年後の就職する勇太郎だったが不慮の事故で亡くなってしまう。悲しみに暮れていると退職金で買ったピアノが届くストーリーとなっています